logo1.gifについてはコチラ(←)

2007年07月07日

再考・マイナス票制度

 前回、投票率アップに関する一私案で私はマイナス票制度の導入について論じました。
 その後、ネットでマイナス票制度を検索してみると、同じようなことを考えている人はいるもので、結構な数が引っかかりました。ほとんどは私のような素朴な賛成意見なのですが、うえぽんさんの反対意見「マイナス票(マイナス投票)が駄目な理由」が非常に参考になりました。(というか、先に読んでおくべきでした)
 以下では、うえぽんさんの批判を踏まえ、マイナス票制度の欠陥を是正する「新・マイナス票制度案」について論じたいと思います。

マイナス票制度の問題点 一票の格差が生じる

 前回私が提案したのは、一票を誰かに投じるという今までの方式以外に、誰かを落とす(マイナス一票を投じる)というのも認めろ、という素朴なマイナス票制度でした。
 しかし、これだと一票に格差が生じてしまうというのがうえぽんさんの指摘です。詳細は「マイナス票(マイナス投票)が駄目な理由」を読んでいただきたいのですが、以下に私なりに整理しておきます。

 今、A・B・Cの三候補者がいて、有権者は自分の持つ一票をプラス票かマイナス票かのどちらかで行使できるとし、そのときに票の価値の是正をしない場合、を考えてみます。

 有権者二人が、それぞれA候補とB候補に一票づつ入れた場合(設例1)

【表A】

A候補 +1
B候補 +1
C候補 ±0票

 となり、A・B候補とC候補の差は1票となります。
 しかし、これはC候補にマイナス票を一票投じただけで同じ効果が得られます。すなわち、

【表B】

A候補 ±0票
B候補 ±0票
C候補 −1

 この場合も、結果的にA・B候補とC候補の差は1票です。
 つまり、この場合マイナス票はプラス票二票分の価値をもつことになるわけです。これがプラス票・マイナス票間における一票の格差の問題です。

* しかも、この方式だと、プラスとマイナスで相殺された候補が、プラスもマイナスも入らなかった候補との関係において不利に扱われることになります。これについてはマイナス票の意味を説明した上、設例2のところで後述します。

マイナス票の正体

 では、なぜこのような問題が発生するのでしょうか。
 それはマイナス票を投じることの意味を裏から考えればわかります。今までのプラス投票と単位を揃える意味で、マイナス投票をプラス投票のみで表現してみましょう。先ほどと同じく、Cにマイナス票を一票投じるのをプラスを用いて表すと、

【表C】

A候補 +1
B候補 +1
C候補 ±0票

 となります。これは【表A】と同じ事ですね。つまり、誰かにマイナス票を1票投じることの正体は、マイナス票を投じた以外の人全てに投票したことに他なりません。

 ということは、【表C】において、プラス票がマイナス票とバランスを取ろうとするなら、当然プラス票を投じる人にも2票を与えれば良いことになります。
 結局、うえぽんさんの指摘する問題点は、一票の価値の格差を是正すれば解決できそうです。

是正の方法について

 プラス票・マイナス票間における価値の格差を是正するには二つの方向性があります。

 一つは、一人一票ではなく、一人に複数票、具体的には(立候補者総数−1)票を与えるやり方です。これを加算式と呼ぶことにします。前項で行った是正ですね。
 もう一つは、一人一票を堅持し、後からマイナス票の総数に是正を加える(具体的にはマイナス得票数に(立候補者総数−1)分の一をかける)方法、ここでは修正式と呼びます。

 上記について、具体例を用いて説明します。
 例えば、A・B・C・Dの4候補がいて、得票数が以下のような場合(設例2)

  +票 −票
A候補 0票
B候補
C候補 0票 0票
D候補 0票


 加算式では以下のようになります。
 候補者が4人なので、1人3票で数え、マイナス票は他の人に均等に振り分けられるので、

  +票 Bの−票 Dの−票 合計
A候補 +3 +1 +1 +5
B候補 +3 +1 +4
C候補 +1 +1 +2
D候補 +1 +1

 となります。

 一方、修正式では以下のようになります。
 候補者が4人なので、マイナス票については(候補者4人-1)で 1/3 の修正値がかけられます。

+票 −票 合計
A候補 +1
B候補 +1 −1/3 2/3
C候補
D候補 −1/3 -1/3

 お気づきかと思いますが、加算式と修正式ではプロセスが多少違うだけで結論は同じです。修正式の結果に3をかけて分母を払い、全員に2を加えれば加算式の結果と同じになるのをご確認下さい。

 ちなみに、マイナス票の価値を是正しないと以下のようになります。

+票 −票 合計
A候補 +1 +1
B候補 +1 −1 ±0
C候補 ±0
D候補 −1 −1

 B候補とC候補が同じ評価となってしまいます。この理由は今まで説明してきた通り、マイナス票の価値が大きすぎることによる歪みです。

 長々と説明してきましたが、要するに、マイナス票方式を導入する際、加算式か修正式かを取ればプラス・マイナス間の一票の格差は解消されます。
 では、このうちどちらを導入すべきでしょうか。

修正式を推す理由

 私は修正式を用いるべきだと思います。

 確かに加算式にもいいところがあります。それは票を好きなように投じることが出来ることです。
 一人に数票を与える加算式は大選挙区制・比例代表制における制限連記制のようなもので、好きな人に複数の投票を振り分けたり、落としたい人以外に公平に振り分けるなど、自由度の高い投票が可能になります。この制度の考え方と有権者の投票に対する意識が高まれば、私も加算式を取ることにやぶさかではありません。

 しかし、そもそもマイナス票の導入を考えるきっかけとなったのは、有権者の政治に対するしらけモードおよびその結果である投票率の低下です。前回の繰り返しになりますが、現状の「落ちて欲しい人以外の誰かに投票する」というやり方は「入れたい人はいないけど落としたい人ならいる」という有権者の意志をストレートに反映しない手段なので投票に対するインセンティブが働かないのではないか、というのが問題意識でした。加算式ではこの意志と手段のねじれが解消されません。マイナス票をそのままマイナスとしてカウントする修正式を用いてはじめてこのねじれが解消されることになります。
 また、一人に複数の票を用いることは、支持者数・不支持者数の数をわかりにくくします。この点、一人一票を堅持した方が、選挙区内の有権者のどれくらいが投票し、またどれくらいが不支持に回っているかがより直感的に把握できます。

おわりに

 長々と書いてきましたが、以上が私の「新・マイナス票制度導入案」です。

 最後に、「この制度は複雑なのではないのか?」という疑問にお答えしてこの小論を終わりたいと思います。
 確かにマイナス票を導入すると、今までより多少複雑になるのは否めないかもしれません。
 しかし、やっていることは思っているよりも単純です。集計はプラス票とマイナス票をそれぞれカウントし、マイナス票に修正をかけてから引き算をするだけ。一時期分数の出来ない大学生の話が取りざたされていましたが、そこにレベルを合わせるのならともかく、一般的にはそれほど難しい作業でないはずです。
 また、修正式だと候補者にとってマイナス票を投じるインセンティブが働きません(誰かにマイナス票を投じろと言っても、そのマイナス票の見返りは他の候補で分け分けするのですから、自分にプラス票を入れてくれという方が遙かにお得です)。ですから、候補者は今まで通り自分への支持を訴えればいいだけです。

 今まで、個別の政党を支持しない人は全部「無党派」という括りで一括処理されていました。しかし、「無党派」にも色々あるわけで、そういう声を少しでもより正確に反映させる「マイナス投票制度」は良い案だと思うのですが…疑問、反論、問題点など、ございましたら遠慮無くコメント欄までお願いします。

(了)

《関連記事》
投票率アップに関する一私案
・再考・マイナス票制度

《参考文献》
・加藤秀治郎『日本の選挙』(中公新書)
 ⇒選挙制度について原理的なレベルから考えられる名著。ただ、加藤先生はマイナス票制度に反対されそうな気がします…

《参考リンク先》
・うえぽん「マイナス票(マイナス投票)が駄目な理由
   『うえぽんSW局
 ⇒うえぽんさんのおかげでマイナス票制度について考えを深めることが出来ました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

《トラックバック送信先》
・nao「選挙にマイナス票を導入してほしい
   『いろいろ
・鏡慎吾「マイナス票
   『swk's log

posted by だっしー at 11:31| 大阪 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・時事問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/47001023
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
【謹告】
コメントやトラックバックを残される方は事前に「こちら」の注意事項を必ずお読み下さい。
 これらに目を通さずにトラブルが発生したとしても、当方は一切責任を負いませんのであしからず。